資金調達にかかるコスト
銀行などの債権者は借り入れに対するリターンとして利息の支払いを要求する
→株主に対しても、コストを支払う必要がある。
(最近は日本企業も配当が増えている→日本株の投資妙味高まるか、企業の配当が記録的水準に拡大-野村証)
株主に対しては、配当やキャピタルゲイン(株式の値上がり率)という形のコストが発生する。企業が債権者や株主に支払うこれらのコストを資本コストという。
企業の資本コストは、株主の要求するリターンと債権者の要求するリターンを加重平均することで計算できる
→資本コストは、加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital:WACC:ワック)とも呼ばれる。
企業にとっては資本提供者の要求のため生み出す必要のある、最低限の収益率といえる。
株主は収益の配分を受ける順番が最後になる。損失は真っ先に影響する(配当なし)。
株主のほうが債権者に比べて、リスクを取っている。
株主資本コストのほうが負債コストよりも高くつく。
※株主資本=自己資本(返済不要の資本)
時価総額=株価×発行済株式数
WACC= re × E/E+D + rd(1-Tc) × D/E+D
re:株主資本コスト
rd:負債コスト
E:株主資本(時価)
D:負債(原則時価)
Tc:実効税率
例)
あなたの会社の発行済み株式数が20万株。現在の株価は2000円。また、金利5%の借入金が150百万円ある。税率50%、株主は年率15%のリターンを求めているとする。このときのWACCは?re=20%
rd=5%
E=400百万円 (20万×2000)
D=150百万円
Tc=50%
WACC
=15% * 400百万円/400百万円+150百万円 + 5%(1-50%) * 150百万円/400百万円+150百万円
= 11.59%
企業は、株主と債権者双方に対するこのWACCを上回る利益を上げて初めて、企業価値を高めることができる。
≒WACCは、企業が株価を維持するために最低限生み出す必要のある収益率
≒WACCを上回る超過リターンはすべて株主に還元される(借入金利は一定のため)。
企業が株主の求める以上のリターンを生み出した場合、投資家が集まり、株価は上昇する。
企業がプロジェクトを行うか否かの判断。その適切な割引率はWACCとなる。
→WACCを割引率として使用する際の条件
プロジェクトが現在の事業と同程度のリスクであるかどうか
CAPM理論を用いて資本コストを求める
資本コストの算出方法に正解はない。
CAPM理論
E(r) = rf + β(rM-rf)
E(r): 任意の株式の期待リターン
rf: リスクフリーレート
β: 任意の株式のβ値
rM-rf:マーケットリスク・プレミアム
E(r) -rf = β [ E(rm) – rf ]
期待リスクプレミアム(期待リターン)=β × リスクプレミアム
→グロービス経営大学院 CAPM(資本資産価格モデル)とは・意味
→競争的な市場においては、株式の期待リスク・プレミアムはβに比例する
リスクフリーレート(rf)
最も一般的に使われているリスクフリーレートは、10年物の国債の利回り。
リスクプレミアム(E(rm)-rf)
期待収益率とリスクフリーレートとの差。安全な(リスクフリー)資産から、リスク資産に要求する分増える収益率のこと。国債よりどれだけ高い利回りかを示す。
定義としては、長期間に渡る株式/リスクフリーの平均の差となる。
→どこまで遡るか、短期債か長期債か、算術平均か幾何平均(年複利成長率)か?
→リスクプレミアムは前提条件によって大きく変わる
米国の証券市場では歴史的に6%~8%、日本の証券市場では4%~6%程度であるといわれるが、どの程度の期間の実績を使うかによって推定値は変わってくる。
CAPMの問題点
・過去のデータから求められていること。
→大事なのはこれからの株式リターンなので、極端な話、過去はどうでもいい。
・βで捉えきれないリスクがある。
→βはマーケット全体と比較して、個別の株式のリスクの大きさを表すもの。ただそれだけ。不祥事の発生がわかるものじゃない。